コラム

岩手県IT企業アンケートをから見える「地方IT産業のリアル」─2025年の今、何が変わり、何が課題を読み解く

こんにちは。今回は、岩手県が令和3年(2021年)に実施した「県内IT企業の現状に関するアンケート」の結果をもとに、地方IT産業の実情を読み解いてみたいと思います。

このアンケートは、県内のIT関連企業164社を対象に行われ、72社から回答が寄せられたものです。

そこから見えてきたのは、地方ならではの強みと同時に、全国の地方IT企業に共通する課題でした。

アンケートから見えた「地方IT企業の現状」

調査当時、岩手県内のIT企業の多くは小規模事業者であり、従業員数10名以下が約3割を占めていました。

事業内容は「受託開発ソフトウェア業」が8割を超え、首都圏企業からの下請け業務や、自治体などの受託案件に依存する構造が見られました。

経営面では「売上・利益は増加傾向だが、顧客数は横ばい」という声が目立ち、マーケットの広がりに限界を感じている様子も伺えます。

新型コロナウイルスの影響で取引停止や営業自粛を経験した企業も多く、改めて事業継続のリスクに対する脆弱性も浮き彫りとなりました。

課題の中心は「人材不足と育成」

アンケート結果で最も多くの企業が挙げた経営課題は、

  • 新技術への対応(70.8%)
  • IT人材の育成・確保(各63.9%)

というものでした。

人材が足りない、そして育てきれない。

これは岩手県だけでなく、全国の地方都市が抱える共通の悩みです。

実際、回答企業の7割が「人材が不足している」と回答しており、必要な人材像としては、入門レベルからAI・データ分析ができる高度技術者まで多岐にわたっています。

特定分野に強い人材はいても、複数分野を横断できる「ジェネラリスト」が少ないという声もありました。

2025年6月の今、どうなっているのか?

2025年6月現在、地方におけるIT人材の不足はさらに深刻化しています。

特に、生成AIやクラウドネイティブな技術に対応できる人材が地方では限られており、都市部とのスキル格差が拡大しています。

一方で、リモートワークの普及により、東京など都市部のIT人材が地方企業のプロジェクトに参画する事例も増加

副業・兼業人材の活用が一部で進んでおり、今後の突破口として注目されています。

また、ChatGPTなどの生成AIを活用した業務効率化や顧客サポートの自動化にも取り組む地方企業が徐々に出始めています。

技術の波をどう味方につけるかが、今後の分かれ目になりそうです。

全国の地方に共通する課題とは?

岩手県に限らず、全国の地方都市では以下のような課題が共通して見られます。

  • 人材の流出(Uターン・Iターンの難しさ)
  • 地元顧客のIT導入意欲の低さ
  • 産業集積の不足による競争・連携の機会減
  • 大都市圏の企業に依存した取引構造
  • 地元大学との連携が弱く、育成と採用がつながらない

つまり、地方にいること自体がビハインドになっているのではなく、エコシステム(教育・雇用・産業連携)の未整備こそが最大のボトルネックなのです。

地方IT企業が今できる解決策とは?

1. 柔軟な働き方と副業人材の活用

都市部の優秀なエンジニアやフリーランスを副業・業務委託で受け入れる仕組みを整えることで、人材不足を緩和できます。

特に生成AIやクラウド系のプロフェッショナルは、短期的プロジェクトでの活用が効果的です。

2. 情報発信とセルフブランディング

自社製品や導入事例を、ブログやSNS、YouTubeなどで積極的に発信しましょう。

地方にいても、情報発信次第で全国の顧客とつながることができます。

3. コミュニティ・勉強会の活用

社内外のエンジニアコミュニティとつながることで、技術力と営業力の両方が高まります。

地方でも技術勉強会やミートアップは開催されていますし、自ら主催するのも一つの手です。

4. 教育機関との連携で人材育成を「地元化」する

地元の大学や高専、専門学校と共同でインターンシップやプロジェクト型授業を実施すれば、学生が地域に定着しやすくなります。

企業側がカリキュラムづくりに関わることがポイントです。

官民連携で「地域の強み」を最大化する

民間企業だけでは限界もあります。ですから、行政・教育機関との連携も大切なピースです。

  • 地方自治体による「地元人材育成奨学金」や「起業支援補助金」
  • 商工会や中小企業支援機関によるマッチング機会の創出
  • 「岩手県版DX」など、地域特化の施策推進

こうした官の後押しを受けながら、民間が主体的に行動する

──これがこれからの地方ITの生き残り戦略だと考えます。

おわりに

今回のアンケート結果を改めて読み解くことで、岩手県をはじめとする地方IT企業が置かれているリアルな現状が見えてきました。

課題は多いですが、可能性も決して小さくありません。

2025年の今、技術も働き方も「場所に縛られない時代」です。

だからこそ、地方にいるからこそできるビジネスモデルを模索し、地域に根ざしながら全国・世界に向けて挑戦する企業が増えていくことを願っています。


※参考資料:
・岩手県商工労働観光部ものづくり自動車産業振興室「県内IT企業の現状に関するアンケート」令和3年1月公表
・総務省・経産省・中小企業庁各種資料

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